「砦に拠る」松下竜一(書評)

砦に拠る (ちくま文庫)

砦に拠る (ちくま文庫)

ダム反対運動の先頭に立ち、最後の一人になるまで国と戦い続けた老人の話。実話。


村の長老格で勉強家で至極当然にリーダーの座に着いたのだが、融通が利かず、人の意見や感情には無視するどころか押さえつけ、妻にも仲間にも「お前らは黙ってついて来ればいいんだ」と言わんばかりの言動をひたすら繰り返し、至極当然に最後は誰もついてこなくなる。ごくたまに見せる茶目っ気や人情味からつい「どこか憎めない」「根は優しい」と思ったりするのが恨めしいほどだが、そんな強烈なキャラが読みにくい文章を最後まで何とか読み切らせてくれる。