「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」村上春樹(書評)

発売当時はお祭り騒ぎに辟易して読まなかったのだが、二年経って軽い気持ちで手に取った。


イヤミな春樹的要素(主人公のモテ具合とか音楽ネタ散りばめとか悪戯に面倒臭い比喩とか)は一定量あるものの、導入部の「色」の紹介から後半の「巡礼」までストーリー自体は懲りすぎず分り易い展開で、それでいて十分な満足感をも味わえた(中盤で登場人物に「死とは」「自由とは」を理屈っぽく語らせる箇所を除く)。


この人、信者たちが作品に珍妙な解釈を加えたり自分を必要以上に神格化したりそもそもその存在自体が嫌になったんじゃないか。