「羆嵐」吉村昭(書評)

羆嵐 (新潮文庫)

羆嵐 (新潮文庫)

    大正時代の北海道の山村で、ヒグマに襲われ6人が死亡した事件を小説仕立てにした作品。

    たった一頭のヒグマに対し全くなす術なしの状況から、素行の悪い一人のクマ猟師と彼に運命を託そうとする区長によって少しずつ事態が進んでいく。クマがなかなか姿を現さず、それが逆に読み手の恐怖をかき立てる。クマが去った後の現場の描写もエグい。面白いというのが憚られる題材だが、夢中になって最後まで一気に読んでしまった。

    昔知床を旅した際に「クマいねーかなー」などと呑気に構えていた自分のアホさ加減…