「悲しみの歌」遠藤周作(書評)

悲しみの歌 (新潮文庫)

悲しみの歌 (新潮文庫)

    米兵捕虜の生体実験に関わり戦犯となった過去を持つ医師と、正義感と出世欲に駆られその現在を追う新聞記者。

    二人の言動の対比から「優しさで救うことのできる限界→神の存在への疑問符」みたいなお得意の暗澹とした展開に持って行きつつ、一方でこちらもお得意のグータラ学生やらヘンテコ外人やらを絡ませることで適度に和ませてくれる。両方とも彼の持ち味だが、一つの作品に同居してるのは珍しいのでは。

    代表作の一つ「海と毒薬」の続編とのことだが未読でも十分に楽しめた。読むけど。