「巨鯨の海」伊東潤(書評)

 

巨鯨の海 (光文社時代小説文庫)

巨鯨の海 (光文社時代小説文庫)

 

 

    江戸時代末期から明治にかけての捕鯨漁村を舞台にした短編集。海に出る者と陸で作業する者、海に出る者同士の間でのヒエラルキー、事情を抱え出稼ぎに来る者と地の者との距離感、ハイリスクハイリターンな産業であるが故の結束や掟、といった要素が複雑に絡み合い、短編なのに一つ一つが妙に重く読み応えあり。

    時代ものでマニアックな題材を丁寧に拾う人らしく、他の作品も読んでみたいと強くそそられる。