「恍惚の人」有吉佐和子(書評)

恍惚の人 (新潮文庫)

恍惚の人 (新潮文庫)

気難しく自分にも辛く当ってきた舅が姑の死を境に認知症を発症。過去の仕打ちを思い出しながらも症状が進んでいく舅と対峙するうちにその表情の変化に気づき…


昭和40年代、介護自体の大変さに加え、まだ古い価値観を引きずっていた時代ならではの苦労も描かれている。舅の変り果てた姿に自分の将来を重ねたり、爛漫な若者を羨んだりといった主人公の心の動きにも共感。


彼女が振り回される度、過去のいきさつを思い正直何度も「早く*ね」と思った。フィクションだから主人公も最後に恨みを解いたが、現実はそうはいかないだろう。