2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「黒南風の海」伊東潤(書評)

秀吉の二度に渡る朝鮮出兵を小説化。先兵となった加藤清正の部隊を中心に、豊臣家中の勢力争い、大義なき戦略戦争に臨む兵士たちの心情、両国に明を加えた当時の複雑な外交バランス等といった要素を織り込みながら話は進む。清正はともかく三成や行長までも…

「バイエルの謎」安田寛(書評)

ピアノを習う殆どの子供が最初に手にする教則本バイエル。ただそんな状況にあるのが日本だけだということ、何よりバイエル自身の情報が殆どないこと等に疑問を感じた筆者が彼の足跡や功績を探しに世界各地を巡る。そもそも彼が存在したことすら否定するよう…

「小説 新聞社販売局」幸田泉(書評)

半沢直樹風の勧善懲悪企業小説の体を装っているが、実体は元記者による業界批判&暴露本。自社に批判的な記事を書いたことで上席に疎まれ販売局に放出という自身と全く同じ設定の主人公に、自身がなし得なかった社内不正の摘発や元上司への仕返しをさせて憂さ…

「カルチャノミクス」エレツ・エイデン他(書評)

googleがスキャンしまくった数百年分の書籍DBを用い、特定の単語がそれらの書物に出現する頻度を分析するとどんなことを明らかにできるのか。 冒頭の「不規則動詞」では、昔は不規則動詞だったものが年月をかけて使用頻度の低いものから順に規則動詞(過去…

「さかしま」梁石日(書評)

ユイスマンス「さかしま」のついで読み。 終戦直後の大阪を舞台にした連作短編2本同じような雰囲気の短編数本。 誰もがその日を生きるのに精一杯の状況下、友情とか正義とか理性といったものは遠くに追いやられ、追いやらなかったものは者は追いやった者に…