「天を衝く」高橋克彦(書評)
信長が天下統一のメドを付けつつある頃、北東北に根を張る源氏の末裔南部氏一族の中で繰り返された勢力争いの物語。
ちんけな内輪揉めが主であるにも関わらず、主人公九戸政実の喧嘩上手っぷりと奥州の大地が舞台のせいかスケールの大きな話と誤解させてくれる。政実は戦場での指揮だけでなく政治的な駆引や評定での論戦にもめっぽう強く、最後の秀吉政権との合戦まで痛快に暴れ回り続ける。
作者の地元愛とストーリーテラーぶりによって、史実の数倍に面白さが膨らんだと思われる良作。