「火怨 北の燿星アテルイ」高橋克彦(書評)

 

火怨 上 北の燿星アテルイ (講談社文庫)

火怨 上 北の燿星アテルイ (講談社文庫)

 
火怨 下 北の燿星アテルイ (講談社文庫)

火怨 下 北の燿星アテルイ (講談社文庫)

 坂上田村麻呂による東征を蝦夷の側から描いた長編。

 自分達の領国を守るためだけの理不尽な戦いなのだが、数で圧倒的に勝る朝廷軍を見事な戦略で何度も撃退する様が爽快。仲間への遠慮のない冗談が飛び交う(TOKIOみたい)蝦夷のドリームチームがすんごい魅力的で、下巻でようやく登場する田村麻呂のいい奴ッぷりや、彼が指揮官に就任する以前の朝廷軍のダメっぷりと絡んで読み手の気持を高ぶらせてくれる。

 そしてラスト。ネタバレするので多くは言わないが、教科書だと「朝廷軍の勝利」の一言で終る話がここまで深く複雑で感動的とは!