「落日の王子 蘇我入鹿」黒岩重吾(書評)

    蘇我入鹿大化の改新で斃されるまでのおよそ5年間の物語。

    教科書上では父親の蝦夷とともに悪役一辺倒の人だが、知識欲旺盛かつ長期ビジョンを有する優秀な治政家の側面や、女性や部下に対する細やかな気遣いなど魅力的な面も覗かせている。

    また件のクーデターが一発逆転ホームランではなく、中臣鎌足が核となり数年かけて緻密に進めらたプロジェクトであったことも丁寧に描かれている。

    歴史ものの宿命でネタバレなのに、最後まで緊張感の途切れない名作。